Each Other

 

 再び王国から神の眼が消失してしまったため、国王の勅命により、フィリアはソーディアンマスターたちを集めるため、まずはスタンの住んでいるリーネの村へと訪れ、現在、ルーティとウッドロウの二人を呼びに行くため、スタンたちはどちらを先に迎えにいくにしろ、船を使って行かなければならないので、ノイシュタットへと向かっていた。

 

 そんな旅の途中の出来事。

 

「早く他の皆と会わないといけないな。」

「え、ええ…そうですわね…」

 何気なく彼が溢した言葉。彼女はそれを聞いて言葉を濁しながら、どこかぎこちなく微笑んだ。

 たしかに事は急ぐ。

 もし神の眼が悪用されるとなれば、ソーディアンたちの言っていたとおり世界を破滅に導きかねない。早急に神の眼を奪った犯人を突きとめなければ、それは現実のものとなりうるだろう。

 しかし、彼女はこういうふうにスタンといる時間がもっと延びればいいのに、と思っていた。そしてそういう風に自分が思っているということを再確認すると、自分の浅はかさに恥じた。

 そう、今は一刻でも早く、事件を解決しなければならない。その為にも他の二人…ルーティやウッドロウたちも呼びにいかなくては。

 ルーティ…彼女の名が浮んだところで彼女の気持ちは思いとどまった。第三者のフィリアから見てもルーティはスタンに好意を寄せていることは分かるし、スタンもまんざらじゃなさそうに見える。

 スタンと彼女を逢わせたくない…そう想った瞬間、なんてバカなことを、と自分自身を貶め恥じた。

 

「フィリア!」

「えっ…!?」

 スタンに呼びかけられ気がついたときにはもう遅かった。魔物がこちらに向かって突撃してくる。慌てて手にしているクレメンテを振ろうとするが、元々武術には心得がない彼女がそう上手く対処することができるはずも無かった。

 ――危ない!

 そう思って目を瞑った。しかし、痛みはない。 そうっと瞼をあげる。

 自分の純白の法衣を染め上げる深紅。

 それは自分のものでもなく、ましてやモンスターのものでもなかった。

 自分をかばってくれたスタンの血であった。

「ぐうぅ…!」

「スタンさん!」

 スタンは魔物の爪で裂かれた腕の傷口を構いもせず、モンスターを蹴り飛ばし、ディムロスを再び構えなおした。

「ディムロス!行くぞっ!

 魔王炎撃破ッ!

 魔物に向かってディムロスを斬り払うと同時に、ディムロスから発せられた炎が魔物を焼き尽くした。

 

≪全く、なんて無茶をするんだ…。お前の無謀さには呆れるばかりだぞ。≫

「なんだよぉ…そんな言い方をしなくてもいいじゃんか…。」

 スタンたちは、すぐそばにあった大樹の木陰にて休みをとっていた。スタンの腕にはしっかりと包帯が巻きつけられていた。

 ディムロスの叱責に、スタンはすっかりションボリと肩を落としていた。しかし、それ以上に落胆の息をもらしている者がいた。フィリアだ。

「本当にごめんなさい…私ったらいつも足を引っ張ってばかりで…。」

 人一倍責任感の強い彼女は、自分を責めずにはいられなかった。自分がケガをするのならまだしも、自分のミスのために他人がケガをするのは彼女には耐えられない。

「いや、大丈夫だって! ほ、ほら、この怪我だって大したものじゃないんだし…うぎっ!」

 スタンは腕をまわして元気さをアピールしようとするが、やはり傷口が傷み、彼は慌てて自分の腕を押さえた。

≪無茶をするなと言っているだろう。毒がまわっている可能性もある。

 しばらくはじっとしていろ。

≪ほっほっほっ、無茶は若者の特権じゃて。そう責めてやるな。

 しかし、ディムロスの言うことも正しいぞ。今日は野宿で決まりじゃな。

 そう言うディムロスとクレメンテをよそに、スタンは落胆したフィリアの表情を真摯に眺めていた。

 

 

 パチパチと薪を焼く音が夜空に響く。

≪しかし、こういうときにアトワイトとルーティがいればすぐに治ったのだがな。≫

 ディムロスの言うとおり、彼女はアトワイトの力を借りて癒しの晶術を扱うことができる。しかし、今はその彼女らもいない。

 フィリアは彼女らの名を聞いて、また落ち込んだ。そう、彼女たちがここにいれば、スタンの傷も癒せ、本当ならすでにノイシュタットに着いているはずだった。こんなとき、本当に自分は足手纏いだと痛感する。その時、彼女の何かがきれた。

 そんなフィリアを見かねたスタンが彼女に声をかける。

「あのさ、フィリア。そんなに気にしないでよ。

 ほら、俺っていつもこんな傷作ってるから、ね。こんなの別に大したこと無いよ。

 だから…」

「気休めはよしてください!」

 突然、スタンの声を遮るかのように、涙を流しながらフィリアが叫んだ。

「お願いですから、そんな気休めを言わないでください!

 いつもいつも、皆さんの足を引っ張ってばかり…やはり、私は要らないんだって、そうはっきり言ってください!

 そんな、気休めを言われるよりずっと気が楽です!」

 いつもは大人しく、おどおどし思い切ったことは発言しない彼女が、声を荒げながら叫ぶのを見て、スタンだけでなく、ディムロスやクレメンテも驚いている。

「私は…結局何も出来ないんです…。

 あの人たちを止めることもできなかった…」

 彼女が言っている「あの人たち」とは、以前神の眼を奪ったグレバムやそれに加担した彼女と同じ神殿の者のことを指しているのだろう。

 彼女にとって、彼らは家族も同然だったが、それを止められなかったことをずっと後悔していた。

 

 すると、スタンはふっと顔をほころばせ、口を開いた。

「そんなことはない。

 言っただろ、君は俺たちの仲間だって。

 それに俺だってフィリアに助けられることだってあるんだよ?」

 穏やかだが、キッパリとした口調。有無を言わさない強さがその言葉には含まれていた。

≪そうだな。 戦闘中に無様にこけ、魔物に襲われたところを、フィリアの晶術に

 助けられたこともあったな。

「なんだよー…、その言い方…。」

 そんなスタンとディムロスのやり取りに思わず、フィリアはふきだしてしまった。

「ふふッ…ごめんなさい。

 …ありがとうございます。私、弱気になっていました。

 『仲間』と言ってくれて本当に嬉しかったです…不束者ですがこれからもよろしくお願いしますね。」

 そういって微笑むフィリアはとても綺麗だった。

…? スタンさん、どうかされましたか?」

 ぽーっとなっているスタンにフィリアは不思議そうに、首をかしげながら声をかけた。

 すると、スタンは慌てて両手を振った。

「い、いや、何でもないよ!

 こちらこそ、これからも、よろしくね。」

 つっかえながらも、ぎこちない微笑みを浮かべながら、スタンは握手を求めて右手を差し出した。

…はい!」

 フィリアは満面の笑顔で、彼の右手を握り締めた。

 

 

 そんな二人を見ていたソーディアン2人。

≪いやぁ…青春じゃのぅ♪≫

≪…今、大変なことが起きているのを忘れているんじゃないのか?≫

 …まぁ、何はともあれ、めでたし、めでたし、ということで。

 

 

 

あとがき

一応、第二部が始まってフィリアさんが迎えにきて、ノイシュタットにつくまでの非常に短い期間の中での話。

実はテイルズ系の小説はこれが初めてだったり。

というか、キャラの口調とか色々変じゃないかと心配だったりします。

まぁ、この2人のカップルはノンビリしてまったりとして好きなので、書けただけでも大満足です♪(ぉ

 

 

 

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