キムランとの結婚をイムランに認めてもらうため、花嫁修業もとい召喚術修行をすることになった盲目の女性、リキュール。
 一週間で召喚術を身につけ、イムランを倒してみせるという無理難題をふっかけられた彼女だが、彼女のキムランを想う気持ちは本物であり、普通の人間ならば諦めてしまうものを彼女は人一倍の努力でそれを乗り越えてみせようと心に誓ったのだ。

 さて、そんな彼女が今いる場所はスピネル高原。ここならば万が一召喚術に失敗してもそれほど被害は出ないし、はぐれ召喚獣の姿も確認しやすく逃げやすい。そういった理由から、此処をリキュールの召喚術の練習場所とした。
 リキュールは祈りを捧げるように膝を折り、手を組み合わせている。
「……交わされた誓約の下、リキュールが汝に願う。
 お願い…出てきてください」
 すると、ぽぉんっとはじけた音と同時に獣界の盟友テテが姿を現し、人懐っこそうな表情を浮かべて、リキュールに抱きつくように跳び、彼女は見えないため一瞬後れて、テテを慌てて抱きとめる。
 どうやら、リキュールはメイトルパの召喚獣と相性が良かったようだ。

「おぅ、上手く行ったようだな、リキュール」
 様子を見守っていたキムランは少しだけ嬉しそうに白い歯を見せながらかかと笑う。それにつれられたのか、リキュールもくすっと笑みをこぼす。
「ええ、これもキムラン様とハヤト様たちのお陰です」
 彼女は笑いながら近寄ってきたテテの頬を撫でる。テテは嬉しそうに短い手足をばたつかせていた。

 目の見えない彼女に召喚術を一から教えるのは大変だった。盲目というハンディキャップは予想以上で、まずサモナイト石の属性を理解するために、まず魔力を感じ取る練習から始めた。

 しかし、今までの経験のおかげなのか、リキュールはハヤトたちの予想するよりも覚えがよく、スポンジのように召喚術の知識を吸収しそれを実行に移していった。
 一を知って十を知るという言葉があるが、まるでその言葉が現すかのようにリキュールは召喚術を覚えていった。
 とはいえ、それでも召喚術というものは一般人にとっては難しいもので、一朝一夕で出来るはずもなく、5日目となる今日でようやく低位召喚獣を召喚させることに成功したのだった。

 もちろん、リキュールにもキムランにも焦りというものはあった。けれど焦ったからといって物事が上手くいくはずはないということを二人は知っており、ただ自分にできることを精一杯やるしかないと考えていた。
 それでもこのままでイムランに勝てるかどうか、ふたりの心に不安ものしかかっていた。だが、リキュールもキムランも決して諦めることだけはしなかった。

 召喚術の練習を重ねているうちに、既に辺りは薄暗くなっていた。ふたりは練習をそこまでにして、サイジェントへの街道を歩き始めた。
「あの…キムラン様?」
「あぁん? どうした?」
 キムランの腕を握って彼の半歩後ろを歩くリキュールは、いつも以上に静かな声で彼に話しかけた。
「……ごめんなさい。
 キムラン様は私みたいな女よりももっと相応しい女性(ヒト)がいらっしゃるはずなのに…」
 きっと彼女は自分の目が不自由なことについて言っているのだろう。たしかに、彼女に光が見えていたならば、こんな事にはならなかったのかも知れない。

 しかし、だからといってキムランがそれを気にするはずもなかった。
「あぁん? 何言ってんだよ?
 じゃあ、お前、俺の顔がお前の思っているような顔じゃなくて、不細工なヤツだったらどうする? 嫌いになるか?」
 この際、本当に彼の顔がいかついだとかは置いといて、キムランはそう訊ねた。すると、リキュールは激しく首を横に振ってそれを否定した。
「いいえ! そんなことありません!
 私は、貴方のあの花たちにかける優しさに惹かれたのです!
 そして、そこから貴方のことを知るようになって…貴方のすべてが好きになったんです! あっ……」
 すべてを言い切ってから少しして、自分の発言の恥ずかしさに気がつき慌てて彼女はしまったと口元を手で抑える。
「そういうことだろ? 俺もおまえもよ?」
 リキュールの告白に、キムランも恥ずかしくなったのか彼女から顔を背け――もちろん、それはリキュールには見えていないが――照れのためか、少しだけ早足になってしまう。
 初々しいそんなふたりの姿を月と星々だけが眺め下ろしていた――



 それから、残る期日までリキュールは、努力を惜しまずひたすらに召喚術の訓練に励んだ。もちろん、それはイムランにキムランとの結婚を認めてもらうために。

 彼が初めてだった。
 自分が盲目だからといって特別な目で見なかったのは。もちろん、勝手に花園に足を踏み入れたことは怒られたが、けれど謝って彼の育てた花の美しさを伝えると彼は嬉しそうに笑ってくれた。
 目には見えないけれど、自分には分かる。いつもぶっきらぼうな言葉の裏には、彼なりの不器用な優しさがあるのだと。彼は隠していたようだが、目の見えない自分の手を握ってさりげなく先導してくれたり、転びそうになったらその頼もしい体で受け止めてくれた。
 なんていいヒトなんだろう。だから、自分よりも他に似合う女性がいるはずだ。そうリキュールは思っていた。
 でも、彼は言ってくれた。「気にしない」と。お前はお前だと言ってくれたのだ。盲目という事実に関わらず、彼はリキュールをリキュールとして受け止めてくれた。
 ならば、彼女が成し遂げることはただ一つだけだった。

 そして、当日。イムランはスピネル高原を試験場として選んだ。これはリキュールが訓練の場として選んだ理由と同じだった。
 対峙するリキュールに向かって、イムランは複雑そうな表情を浮かべて口を開いた。
「…のこのこと出てきおって。体面のことなぞ気にせず、弟とどこぞへでも消えれば良かったものを」
「いいえ。イムラン様が私たちのことを本当に考えてくださってくれてるのは理解しています。
 けれどここで逃げてしまっては、私たちは決して幸せになれないんです」
 リキュールは真摯な表情で、堅く口を横に引き締めながら、杖を強く握り締めた。

 そこから離れたところでハヤトとリプレは心配そうに二人の様子を眺めた後、ちらりとキムランを見た。
「なあ……キムランは心配じゃないのか?」
 彼はただじっと二人が対峙しているのを見守っているだけで、そこには不安だとか心配だとかいう雰囲気は漂っていなかった。ただ、何かを信じて待つような表情が浮かんでいた。
「今更、俺がとやかく言うようなことじゃねえさ。
 ふたりともお互いのことは理解してるだろうしよ。俺もふたりのことは信じてるぜぇ?
 ただ俺が何もできないというのは歯がゆいがな」
 フンと鼻を鳴らすと、腕を組んでキムランは再び目線をイムランたちに向けた。


 一陣の風が草原の草花を揺らした次の瞬間、じりっとリキュールが足を動かす。

「いきます! ―――召喚ッ!」
 手にしていたサモナイト石を掲げながら、杖で大地を衝き乾いた音をかんっと立てる。

 すると、ばうんっと煙とともに現われたのはヒポスとタマスだ。そして見ただけでも嫌悪感を催しそうな色のブレスがイムランへと吐きつけられる。
 まともに喰らってはしまったものの、さしたるダメージはない。
 それは、リキュールの魔力の束ね方がまだ未熟なせいもあるが、イムランは仮にも顧問召喚師を務めているぐらいだ。多少の召喚獣の攻撃に対しては魔力の抗壁を張ることができる。

「フン、そんなものか? 貴様の努力とやらは!」
 イムランはぶんっと短剣を振るいブレスの霧を切り払う。そしてサモナイト石へと魔力を集中させ召喚する。

「マーン三兄弟が長男、イムラン・マーンが、誓約の下に命じる…!」
 ―――ブラック・ラック!
 闇のもやが虚空に集まり、その闇に無数の目玉が不気味に浮かび上がる。そしてその目玉たちがいっせいにリキュールをぎょろりと睨んだかと思うと、その刹那閃光がリキュールの周りではじける。

「きゃああっ!」
 慌てたもののなんとか防御体勢に移ったため直撃は免れたが、それで全てを防ぐことができるはずはなく、空間を迸る衝撃がリキュールへと襲い掛かりその華奢な身体は宙を舞う。

「………ッ!」
 それを見たキムランは思わず彼女の名を叫びそうになる。だが、彼は歯を食いしばって耐える。今の自分は両者の間に入ることはできない。真剣な思いを抱く両者。それを知っているからこそキムランはその名を呼ぶことはできなかった。

 もし、ここでどちらかの名を呼んでしまえば――この場合、リキュールの名前を呼んだならば、必ずイムランは手加減をしてしまうだろう。それほどイムランは二人の結婚を認めようか否か迷っていた。
 だが、それを振り切ってまでも、イムランはキムランやリキュールのことを考えて今の行為に出ているのだ。だからこそ、キムランの一言が再びイムランに迷いを作ってしまうかもしれない。
 それは逆も然りだ。リキュールはただでさえこの結婚に対して負い目を負っている。それでもここまでやってこれたのは、ハヤトとリプレの協力、そしてキムランの存在が大きい。下手なことをすれば、リキュールは身を引くような真似をし得る可能性がある。

 結局、キムランは何もできない。ただ見守るだけしかできない。彼がこれほどまでに自分の無力さを感じたのは、初めてだった。
 ふたりともキムランにとっては大切な存在だからこそ、歯がゆい気持ちでたくさんだった。

 彼がイムランとリキュールに対してできることはただ一つ、信じて待つことだけだった。


 吹き飛ばされながらも、杖は手放さないリキュール。自分の魔力の媒介となる得物を手放すことは敗北に繋がる。それは幾度もなくこの数日間でキムランに教えられていた。

 そして素早く体勢を整えなおし、再度召喚術を行使する。
「――召喚! シャインセイバー!」
 収束された魔力が緑の光の筋となり空へと放出され分散する。上空から出現したのは各々形異なる五本の白銀の剣。ぐるんっと大きく一回りしたかと思うとずががっと凄烈な音を響き渡らせながらイムランを目掛けて大地を引き裂く。

「――ぬおっ…!」
 大地を走る鳴動に思わずイムランはバランスを崩してしまう。
 イムランはここまでリキュールが素早く反応し行動を繋ぐことができるとは思ってもみなかった。

 だが、ここで引き下がるわけには、いかない。
 今丁度、イムランとリキュールの間は五十メートルほどと言ったところだろうか。召喚術を放つには十分な距離だ。
 リキュールは既に召喚術の予備行動に移っているが、行動速度で言えばイムランの方に分がある。ここで攻め手を緩めず、繋げ彼女を追い詰めていけば確実に勝てる。

「出でよ! ダークブリンガー!」
「お願い! シャインセイバー!」
 五本の清廉なる白の剣、五本の純然たる黒の剣、計十本の剣が虚空を舞い、それぞれ相対する剣を打ちあう。
 しかし、衝突しあった召喚術の魔力の干渉からか、それは強烈な旋風を巻き起こす。イムランはその旋風を鬱陶しそうに目を細めて、再度リキュールの姿を確認しようとする――が。

「…何ぃッ!?」
 先ほどまでイムランと相対していたリキュールの姿が真っすぐ此方へと迫ってきていた。盲目である彼女が移動することは彼女にとって危険を伴う行動である。自分が何処に立っているのかさえ分からなくなってしまうのだから。

 それは間違った考え方ではない。今戦いを見守っているハヤトやキムランもそう思っているはずだ。実際、ふたりは驚きの表情を浮かべている。
 だが、彼女は目前まで迫っている。イムランは舌打ちすると、サイドステップで身を移す。どういう考えで此方へ突っ込んできたかは分からないが、急激な動きにはついて来れないはず…次の瞬間、そんなイムランの考えは否定された。

 リキュールはその長い杖をぐっと両手で掴むと、体位を変えて移動したイムランに向けて杖を横薙ぐ。彼女だからこそ予想できなかったその攻撃は、イムランのわき腹に食い込むかのように直撃した。
「ぐはっ…!」
 女性の腕から発せられそうもない力の衝撃が、イムランの体躯を吹き飛ばす。
「ぐぐっ…!」
 思いのほか、イムランに与えられたダメージは強く、痺れるかのように身体に痛みが走る。立ち上がろうとしたその矢先、ドスッとイムランの顔の傍を何かが大地に突き刺さる。
 言うまでもなく、リキュールの杖だ。
「はぁっ…はぁっ…はぁっ…!」
 荒く息をつきながら、イムランを見下ろすリキュール。先ほどの攻撃の運動量と魔力の磨耗からか、彼女もまた立っているのがやっとという感じだ。イムランは半ば呆れたかのような表情を浮かべながら、リキュールを見上げる。

(当たり前だろう…! あれほど召喚術を連発すればこういう結果は見えている!)
 いくら、召喚術が使えるようになったとはいえ、リキュールの魔力は高いわけではない。修練を積んでいるイムランやキムランたちでさえ、幾度とも召喚術を使ってしまえば、魔力は尽きてしまう。
 しかし、彼女はそれをやってのけて、イムランの隙をついた。

(これは―――)

「仕方があるまい…私の負けだ。 貴女の力を認めよう、リキュール嬢。
 出来の悪い弟だが、面倒を見てやってくれ」
 にやっと口の端を吊り上げ、倒れて不恰好のままリキュールの顔を見上げる。
「本当、ですか…?」
「嘘をついてどうする? この格好で私に言わせる気か?
 フン、案外、貴女も意地が悪いのだな」
「あ、ありがとうございます…!」
 リキュールの表情は見る見るうちに笑顔となり、その瞳からは涙があふれ出ていた。
「安心するのはまだ早いわ。これからどうやってあのやかましい他の連中を黙らせるか……奴らは私以上に厄介な敵だぞ?」
「…ええ、分かってます! 私のためにも、キムラン様のためにも…そして、誰よりも私たちのことを考えてくださってるイムラン様のためにも、私、がんばりますから!」
 ぐっとガッツポーズを作って答えるリキュール。この娘なら本当にやれるかもしれんな、そう思いながらイムランは、リキュールの笑顔を眺めていた。

 怪我したふたりの傷を、ハヤトとキムランが召喚術で癒しながら、イムランはリキュールに訊ねた。
「しかし、どうしてあそこで此方に向かってきた? しかも見事にその攻撃を私に当てた…一体どういうことだ?」
 首を傾げるイムラン。リキュールはくすくす笑った後、答えた。
「やはり、私の一朝一夕の召喚術では召喚師であるイムラン様には勝てないと思ったんです。
 だから不意を衝いて一撃を与えようと勝負に出たんです。…一番最初に仕掛けた召喚術…ヒポスとタマス。あのコたちの息はとても強烈でしょう?」
「……まさか、ダメージを与えるのが目的じゃなく…」
「ええ、その匂いをイムラン様に染み込ませるのが目的だったんです。
 私、光が見えない分嗅覚や他の感覚がいいですから、イムラン様の位置が掴めたんです。
 もっとも…あの匂いは私も耐えるのがやっとでしたけどね?」
 そう言って、リキュールは苦笑を浮かべる。それに対して、彼女の治療をしていたキムランは感嘆の息をもらす。
「はぁ…すげぇぜ、リキュール。 俺はお前に召喚術を教えるだけで精一杯だったってのによ…んなこといつの間に思いついたんだ、あぁん?」
「前々からです。イムラン様との経験の差を埋める為にはどうしたらいいのかな…と思って。
 だから、ちょっとだけずるをしちゃいました」
 てへっと笑いを浮かべると、すぅっと彼女の身体から、メイトルパの召喚獣、エールキティが煙のように姿を現す。
 そして一度リキュールに向かって手を振ると姿を消した。

「憑依召喚術か…! それであの威力…」
「ええ…効果が切れる前にイムラン様に一撃を加えられるかどうかは、正直自信がありませんでしたけどね」
 彼女は通常に戦えない分、それを工夫で修正し、そして最後にはこうしてイムランに勝ってしまった。もちろん、イムランの油断があったのかもしれないが、戦いも初めてな彼女がその油断につけいることは難しい。
「そこまで考えていたとは……私が負けるのも当然だな」
「へぇ、イムランも今日は素直じゃないか?」
 くくっと笑って治療を続けるハヤト。イムランはフンと鼻を鳴らすと、顔を背けてしまった。

「ねえ、キムラン様?」
「おぅ、なんだ?」
 治療を受けながら、なぜか頬を赤らめてリキュールはキムランの顔を見つめる。
「あの……イムラン様に勝てたご褒美が欲しいんですけど」
「ん、あぁ、まあ兄貴に勝てたのは凄いことだしな。何が欲しいんだ?
 俺には女の好みがわからねぇからな…んぁ!?」
 困った表情を浮かべるイムランは再度リキュールに顔を向けると、間抜けな声を浮かべている。

「まったく…恥知らずが」
「それって…」
「キス…よね?」
 
 イムランはフンとそっぽを向き、ハヤトとリプレは頬を紅潮させ何かを期待するかのようにじぃっとふたりを眺めて、そして、キムランはというと――

 ……石化状態になっていた。

(あぁん!? こ、此処でか!? おいおい! 兄貴もこいつらもいる前でか!?
 だいたい、俺たち手を握ったのがやっとだろうがよ! そ、そんな、急に、しかも人前で…!)
 しかし、リキュールは瞳を閉じたまま、少しだけ上唇を上向きにさせて待っている。キムランとてキスをすることはやぶさかではないし、ここでやらないのも男として女を恥をかかさせるだけだ。

(えぇい、なるがままよ! 据え膳喰わぬは男の恥!)

 そして、キムランの唇はリキュールのそれに被さった。







 数ヵ月後。
「うわぁ…見てみて! ハヤト!」
 リプレは興奮した様子で、ハヤトの手を取って今日から夫婦となる一組の男女を指した。キムランとリキュールだ。
 ふたりとも絢爛な服装に身を包みながら幸せそうに笑い、お互いの手を握っている。
 やはり、花嫁というのは女の子の夢なのだろうか、リプレは目をきらきらさせてふたりを―特に花嫁であるリキュールを眺めている。
 リプレほどではないが、ハヤトも幸せそうなふたりの表情を見ていると、嬉しい気持ちになった。
「本当に幸せそうね、ふたりとも」
「ああ、そうだな。もしかしてリプレもああいうのに憧れるのか?」
 するとリプレはぷぅと頬を膨らませて、不機嫌そうになる。
「当たり前でしょう? 私だって女の子なんだから」
「悪かった、悪かったって! あ、ほら、ブーケが投げられたぜ?」
「えっ!?」

 気がつけば、キムランの手が添えられたリキュールの手からはブーケが放たれており、お祝いに来ていた女の子たちが我先にと言わんばかりに、それを掴もうとする。
 リプレはハヤトに意識が行っていたため、一瞬出遅れたがそれは関係なかった。
 放たれたブーケは綺麗に放物線を画いてリプレの腕の中へと収まったからだ。
「え、えっ?」
 状況がわからないまま、リキュールに目を向けてみると、彼女はその視線に気がつき、リプレに向けてひとつウインクした。
「これくらいのヒイキはしてもいいですよね、あなた?」
「あ、あなたって、恥ずかしいじゃねえかよ…。
 まあ、そうだな。あいつらが俺たちを応援してくれたから、こうして俺たちは結婚できたんだからな」
 にやっと彼独特の笑いを浮かべると、じっとリキュールの顔を見つめ彼女の頬に片手で触れる。触れられたリキュールはぼっと顔を真っ赤にしてしまうが、それでもはにかみながらキムランの手を取ると、そのまま唇を重ね合わせた。


 晴天のもと多くの人々が祝うなか、ふたりは結ばれた。

 

 


あとがき

 というわけで、キムラン×オリキャラのSSでした。モチーフはWILDARMSのゼットとアウラ。

 何気にイムランやキムランの口調が不安だったり、ヒロインにオリキャラを登用したりと色々不確定要素はたくさんでしたがなんとなく形にはできました。

 口調も怪しげなのに、投稿時には「イムキムが漢だ!」とお褒め下さった時にはとても嬉しかったり。

 自分でもシリアスに描きたいなぁとは思ってましたので。

 まあ、彼等の物語はこれで完結してしまっているので続きはしませんが、機会があればこんな感じのSSを書いてみたいなぁと思ってたりします。

 

 

Back
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送